解析力学に見る人生観
こんにちは.
昔,専攻の関係上,解析力学を学ぶことがありました.この学問,されるがままに講義を受けていると本当に訳が分からなくなります.
しかし,勉強中に出会ったある参考書の一節に非常に面白いトピックがありました.それが力学の基本法則の考え方の中に見る人生観,世界観の話です.
勉強はヘビーで難しかったですが,ここだけは誰が見ても面白いと思ったので,簡単に解析力学の雰囲気を説明してから,その力学の原理に見る人生観,世界観を個人的な応用事例とともに紹介できたらなと思います.
ニュートンの法則の復習
ニュートンの法則
一般に以上3つで表現されます.ここで重要なのはとりあえず運動方程式です!
運動方程式の意味を少し見てみる
運動方程式は高校の物理でma=Fという式で習います.(mは質量,aは加速度,Fは力)
これは実は微分方程式ですね.つまり,変化する量の関係を表した式です.ここで変化する量とはaです.
aは加速度と言いますが,これは少し時間が経った時,速度vがどれだけ変化するか?を表しています.時間あたりどれだけ変化するか?という意味の変化量ですね.
もっと感覚的なイメージを持つために,具体的にいうと,停止していた車がいきなりアクセルを全開で踏んで1秒後に時速60kmになったらめちゃくちゃ加速したな!って思いますよね.そういう感覚です.
まとめると,ニュートンの運動方程式は,今,目の前に見えている物質の加速度(速度の時間変化)や力と言ったものの関係式です.時間変化に関する量が入っているので未来や過去の運動を表現できます.
解析力学の復習(雰囲気だけ)
解析力学ってそもそも何?
僕自身,今も完全に分かってる訳じゃないです...少し復習をしましょう.
解析力学(かいせきりきがく、英語:analytical mechanics)とは、ニュートン力学を数学の解析学の手法を用いて記述する、数学的に洗練された形式。解析力学の体系は基本的にはラグランジュ力学とハミルトン力学により構成される[1]。
(引用: 解析力学 - Wikipedia )
上の説明は個人的に難しいですが, すご〜く簡単に言うと,
解析力学は,これまで学んできた運動方程式より,更に元となる考え方を原理にして,運動方程式すらその原理から導けるように理論的に整理された力学.
こんな感じでいいと思います.*1
そしてこの,「更に元となる考え方」ってのが最小作用の原理というやつです.これは普通に内容を書くとめっちゃ数式ですごく難しそうに見えるので雰囲気で説明します.
最小作用の原理のイメージを知ろう
最小作用の原理,こんな仰々しい名前だと見るだけで嫌になりますが,ここでは簡単なイメージができれば大丈夫です.
簡単にいうと,
自然はできるだけ楽な方法で実現できる現象を現実にする
こんなイメージが持てれば十分かと思います.
想像しにくい場合は,冬の休日の朝,寝起きの自分を想像しましょう.
目が覚めた,でも動きたくない .テレビが見たい.リモコンはどこだ?足を目一杯伸ばせば届く位置にある.立って取りに行けばいいのに,布団から出ないでモゾモゾと足を伸ばす...
こんな感じになりませんか?まさに自然もこうなってます!!!*2
でも,何が一番楽かって比べないとわかんないですね.リモコンを立って取りに行くほうが楽なのか,足伸ばしたほうが楽なのか.
比べて何が一番楽かを教えてくれる方法が変分法です.
一番楽を知る方法「変分法」
変分法は文字通り,変わった分を考える方法です.ここでも厳密さは無視して雰囲気だけ感じていきましょう.
さっきの例をそのまま使います.リモコンをとる一番楽な方法を基準に考えます.今回は「足を伸ばしてリモコンを引き釣りこむ」を一番楽な方法とします.
その基準からずれた動き,例えば立ってリモコンを取りに行くと,足を伸ばすよりたくさん動きます.たくさん動いた分「疲れ」は大きくなりますね.この「余分な疲れ」を変分と呼ぶと考えてください.
ここで,状況を整理して,まとめましょう..
- 今は布団の中(事象:A)
- 目標はリモコンをとってテレビを見ること(事象:B)
- リモコンをとる一番楽な方法は足を伸ばすこと
- 足を伸ばす以外で取ると「余分な疲れ」=「変分」がある
AからBになるための疲れを一番小さくしたい!そんな式を立てれば何か意味のある式が導かれそうですね.
こんな風な考え方をさせてくれるのが変分法という訳です.
力学に見る世界観とは
微分方程式と変分法を比べる
微分方程式とは?
今,目の前に見える物理量の関係式.質量mの物体に働く力とその物体の加速度の関係である.
変分法とは?
ある事象から別の事象に移る際に自然は楽できる方法を探して移る.その楽な方法を見つけ出す道具が変分法である.
ここで,一つ補足します.変分法で出てきたある事象と別の事象の間の運動は,微分方程式でも記述できます.
つまり,この2つの考え方はある現象を記述する方法で,どちらで書いても同じ結果が得られます.同じ物事に取り組むためのアプローチが2通りあるということです!
具体例としては,キャッチボール中のボールの運動をイメージすればいいかと思います.
ボールの加速度や力の関係でボールの動きを考えるのが微分方程式.
A君からボールをB君に渡す(目的).その間ボールの動きを考える方法が変分法.
二つの考え方の解釈
やっと物理の話から考え方,人生観の話に移れます.
微分方程式は,
目的を考えるわけではなく,今,目の前にある問題を観察して,それに対する最も現実的な方法で問題を解決する.
そんな考え方です.
一方,変分法は,
先に目的を考え,その目的を達成するための最善手を目的までの全体像の中で見つけて問題を解決する.
そんな考え方になります.
まとめ
状況によりけりですが,このように2つの考え方を整理して頭に置いておくことは結構大事なんじゃないかな,と思って今日はまとめておきました.
例えば何か団体を作る時,自分が団体を作りたい,と思って作ったならそれは微分方程式的な思考でしょう.このような団体は往往にして失敗します.
一方,何か達成したい目的があってそのために団体を作ることが最善と判断して作ったならこれは変分法的思考です.この場合は成功しそうです.
こんな風に今自分の成すことが,どんな性質のことなのかを2つの思考を使って考えると,自分の思考を整理できるかと思います.
こんな風な考え方の拡大が潜んでいるのが学問の醍醐味ですね.
今日のこの考えに出会えた参考書*3を最後に貼っておきます.それでは.