微分方程式の解とはナニモノか
微分方程式に初めに出会うのは理系学生なら高校の頃かもしれない.
最近は学習指導要領の変更が多く,このあと話す内容を考えると微分方程式は高校で扱うのか少し悩まれる範囲だと思う.
大学生なら理系はもちろん,文系といわれる学部でも微分方程式が欠かせない分野もある.
先に結論を述べる.
微分方程式は「解を求める」ということが小中高で得た「解く」「正解を出す」の感覚と大きく乖離している.
どういうことか詳細を述べる前にまず微分方程式の簡単な理解を紹介する.
微分方程式は微小変化量の関係式と言って良い.変化の仕方を式にしているので連続の,アナログの現象を取り扱うための式となることもわかる.
この微分方程式は一般に解ける形が決まっていると言われている.解ける一例として最も単純な一階の常微分方程式を実際に「解いて」みる.
を変数,を定数として,
を考えてみよう.
をで微分したらになるというので解は,
となる.
これが微分方程式を解くということになるが,解を見るとこれは関数である.
より厳密にいうと解は変数の関数となっている.
初めの話に戻ろう.微分方程式は解ける形が決まっていると言われている.
大学で微分方程式に関わる講義を取ったことがある人や,テキストで勉強したことがある人は◯◯の微分方程式と,方程式の形やよくわからない人の名前で解法が分類されているのを見たことがあると思う.
解法を分類するのはそれ以外ではうまく解くことが難しいからである.
そして,この記事の結論につながる.
解けたというのはどういうことか.
微分方程式を「解く」というのは「解を初等関数もしくはよく知られた特殊関数で書き下せる」ということである.
この事実を聞いた時,マジか.と思った.
これまで解くってことは正解を求めるってことだと思っていたし,数学の正解はひとつだと思っていた.
正確にはひとつでない事は分かっていたつもりだったけど,小中高の学習の中で数学は正しくひとつ答えが出ると錯覚し,頭に深く根付いていた.
極端なことを言うと「解けない」微分方程式も,この方程式を満たす関数を◯◯関数と呼ぶ.と宣言して世間に広まればある意味「解けた」ことになる.
この構造は数学の世界だけの話ではない.
解決するはずのないほどの難題にそれらしい理屈をつけて解けたと宣言し,それが正の感情を持って広まれば解けたことになる.
正しい解が正解だと思っていたが,正の感情を誘起する解を正解というのかもしれない.それが唯一の,最も最適な解でないとしても.